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谷中で語り [演劇・音楽・アート・パフォーマンス]

「蓄音器と映像で巡る語りの世界  *森まゆみの作品*『谷中おぼろ町』2009」

谷中語りパンフ.jpg
7/4(土) 17:00~ 谷中の旧安田邸にて
語り:北原久仁香
三味線:小池純一郎

旧安田邸は、大正8年に実業家藤田好三郎氏(豊島園創始者)によって建てられたもので、
旧安田財閥の創始者安田善次郎氏の女婿・善四郎氏が大正12年に買取り。
平成7年に当主安田楠雄氏が亡くなられた後、財団法人日本ナショナルトラストに寄贈されたもの。だそうです。

関東大震災や戦中の空襲にも耐えてほぼ完全に残っているということで
一歩家の中に足を入れた時から、その落ちついた悠然とも言えるたたずまいに包まれました。
きしむ床や、端がほつれたソファなど、時間、歴史を飲み込んで、
これらのものは一体何を見て何を知っているのだろうと、
好奇心や想像力がかきたてられます。

本棚にいろいろな本(全集や何かの記録やら)が無造作に並べられているのを見ると
今にも着流しでひげを蓄えた男性が現れて一冊手に取る、そんな光景が浮かんできました。
台所やお風呂など、ほんの10数年前まで実際に使われていたそうで、使い込まれた風合いが何とも言えません。
現代の住まいと比べて、住みよいとは言えないかもしれませんが、
この家を大事に維持してきた人たちの想いがにじみ出てくるようです。

またぜひ訪れてみたい場所です。
内部はフラッシュを使わなければ撮影可能のようで、
今度は携帯じゃなく、ちゃんとカメラを持っていこうと思います。

一般公開 毎週水曜・土曜10:30~16:00(入館は15:00まで)

旧安田邸2階.jpg 


さて、

そのお屋敷の1階の座敷を開放してのイベント。

オープニングは、小池純一郎さんの三味線。
三味線のことはまるで分かりませんが(^^;
鋭い音と、でもどこか柔らかいタッチを感じました。
もっと聴きたかったなぁ。1曲だけではもったいない。

次に、
ビクトローラVV-80という蓄音器から古びた音楽が流れて
スクリーンには、古い新聞記事が投影され
場の空気は昭和10年代に遡っていきます。

紀元2600年のお祝いにみなが浮かれて行進した、という記事のバックには
「紀元二千六百年頌歌」の歌が流れ、
聴いている人たちの中に、それに唱和されている方がいるのが印象的でした。
昭和15年という戦争におびやかされる気配が濃くなってきたころの、明と暗かもしれないと思ったり。


そしてスクリーンに、石田良介さんによる路地の剪画(いわゆる切り絵)が映し出され、
語りが始まります。

北原久仁香さんの声、久しぶりに聴きましたが
また一段と深くなっているようで、本当に聴き惚れました。鮮烈。
今回は、森まゆみさんの「谷中おぼろ町」から『佐野屋の海ガメ』と『ジャングル長屋の井戸』。
どちらも年配の人物で、『佐野屋~』の方はなおかつ男性。
低めの渋い声音で、最初はちょっと驚きましたが
すぐに引き込まれて、語る表情を見たり目を閉じて声を聴いていたり、
作品とともに、声を堪能しちゃいました。

一つ一つの音や言葉が、これしかない、という絶妙な色になっています。
作品に、本当に真摯に対峙しなければ出来ないものだろうと思います。
小説そのものもとても味わい深いものでしたが(読んでみたいと思うほど)、
これを耳で、久仁香さんの声で聴くことは
これまたなんて素晴らしいことなんだろう。
誤解を恐れずに言えば
まさに「うっとりと」していた時間でした。

とくに
『ジャングル~』で、路地に住まう人たちにはそれぞれの事情がある、それを問うことなどしない、というくだりは、聴いていて涙が出てきそうでした。
言葉の裏にある言うに言われぬことが、重たくもしみじみと迫ってきた、という感じです。

他の森さんの作品も、もっともっと聴きたくなりました。

語りのイベントやワークショップ、出前おはなし会などもされている北原久仁香さんのHPはコチラ
  ↓
http://erivoice.cool.ne.jp/mederu/index.html


七夕笹09.jpg

玄関の外の笹飾り。

今日は七夕。
何年ぶりかで星空が見られそうだとか。
さて、お願いごとは何ですか?
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コメント 2

北原久仁香

有難うございました~。
嬉しいご感想にうっとりしています。
そうそう、ずーっと「紀元二千六百年」を口ずさんでらっしゃる方がいましたね。
印象的でした。

森まゆみさんの作品は、どれもおすすめです。
是非!
by 北原久仁香 (2009-07-07 14:31) 

花れんげ

***久仁香さん***
コメントありがとうございます!
こちらこそ、こんな素敵な企画を教えていただいて、すっごく嬉しかったですよ~!
あの時代は、まだまだ今生きている私たちにとっても「昔」のことじゃないんだなと思いました。

森まゆみさんのお名前は以前から存じていたんですが、まだ書かれたものを読んだことがありませんでした。
これを機会に読んでみます!(^-^)

by 花れんげ (2009-07-08 09:57) 

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